子ども脱被ばく裁判「親子裁判」判決報告(2023.12.18 仙台高裁)

2023年12月22日金曜日

お知らせ 裁判期日 新着 報告会

t f B! P L

 2312親子裁判報告

子ども脱被ばく裁判「親子裁判」不当判決のご報告と感謝

「またもや司法は子どもを護らず!」

2023年12月18日、寒風が吹く中、仙台高裁前に集まったのは100人に近い人々。誰もが「被ばくから子どもを守れ!」との訴えを心に携え法廷へ入りました。しかし石栗正子裁判長は東京電力福島第一原発事故の被害者となった子どもや親たちのいのちに一切向き合うことのない「ボロボロの判決」「論理が破綻している判決」(弁護団談)を出しました。

司法の無責任さに私たちの怒りは頂点に達しています。しかし同時に感謝の思いでいっぱいです。2014年8月に福島地裁に提訴されたヨチヨチ歩きの「子ども脱被ばく裁判」が、ここまで大きく育つことができたのは、全国各地の支援者のみなさんの励まし、また県内外で闘う原発被害賠償訴訟の連帯があったからこそに他なりません。更に仙台高裁でこれほどの注目を得ることができたのは、みやぎ連絡会や毎回の市内アピールを支えてくださった脱原発みやぎ金曜デモの大きなご協力によるものです。心から感謝申しあげます。

判決決起集会では10名以上の支援者の方々からスピーチをいただき、原発賠償京都訴訟原告団からはオンラインメッセージが読み上げられ、会場に駆けつけてくださった各訴訟団体のご紹介をしました。井戸弁護士によって無罪が確定された西山美香さん(滋賀県東近江市・湖東記念病院冤罪事件被害者)や原爆被爆者と深い関わりを持つ俳優の斎藤ともこさんからも励ましの言葉をいただきました。

どなたも子どもに被ばくを強いる国の無責任さに怒り、本裁判の意義を熱く語ってくださいました。また「声を出すことが困難な福島で裁判に加わってくれた原告さんたちに感謝したい。みなさんが声を上げてくれたからこそ、ここまでの闘いができた」と、原告の苦労を労う温かいメッセージもいただきました。

判決後、仙台高裁前で涙を拭いながら原告(控訴人)のお一人が「脱被ばくの問題がそう簡単にまとまる話ではないと思っている。それを成し遂げる過程に、この裁判があると考えている。またその過程が少し先に延びた、自分のいのちをそこに費やす時間が増えたのだと思っている」と新たな決心を語ったように、子ども脱被ばく裁判は最高裁判所へ向かいます。そして、その先も脱被ばく社会の実現を目指していきたいと願っております。今後とも宜しくお願いいたします。

2023年12月 子ども脱被ばく裁判の会

井戸謙一弁護士 判決報告

こちらは井戸弁護士による原告(控訴人)への報告となりますが、みなさんと
共有します。(子ども脱被ばく裁判の会事務局)

2023年12月19日
仙台高裁判決のご報告

子ども脱被ばく裁判原告(控訴人)の皆様

子ども脱被ばく裁判弁護団長  井 戸 謙 一

 2023年12月18日午後3時から仙台高裁で子ども脱被ばく裁判(親子裁判)の控訴審判決が言い渡されました。石栗正子裁判長は、入廷したときから顔が引きつっており、悪い予感がしましたが、案の定、控訴棄却(原告らの請求を認めない)の不当判決でした。判決後の集会では、参加しておられた原告の方々から最高裁判所へ上告する旨の意思表明がなされました。簡単ですが、判決内容をご報告します。

1 損害の立証について
(1) 前提事実
原発事故によって受けた損害の賠償を求める手続を定めた法律として、原子力損害賠償法があります。この法律では、原発事故によって生じた損害は、原子力事業者(福島原発事故の場合は東京電力)に対してしか請求できないことになっています。
他方、国や地方公共団体に対する損害賠償の手続を定めた法律として国家賠償法があります。国家賠償法に基づいては、原発事故によって生じた損害の賠償は請求できません。それは、原子力損害賠償法に基づいて原子力事業者に対して請求すべきものだからです。
私たちは、国及び福島県に対して損害賠償を求めていますから、根拠となる法律は当然、国家賠償法です。私たちは、国や福島県に対して請求しているのは、「原発事故によって生じた損害」ではなく、「国や福島県が当然なすべき住民の放射線防護対策をとらなかったことによる損害」であると主張しています。国や福島県が当然なすべき住民の放射線防護対策をとらなかったため、子どもたちは、原発事故が起こったために避けることのできなかった被ばくに加え、「無用な被ばく」をしました、そのために、将来の健康不安が高まり、精神的苦痛を被りました、そのことによる慰謝料を請求しているのです。
(2) 判決の内容
判決は、次のように言いました。
「原告らは、原発事故によって受けた被ばくではなく、国や福島県がとるべき対策をとらなかったために受けた被ばく(いわば被ばくの上乗せ分)に対する賠償を求めているが、上乗せとしてどの程度の被ばくをしたのか、主張立証していないから、原告らの主張は失当である。」
(3) コメント
国や福島県がスピーディ情報を隠したため、津島の子どもたちは、避難のタイミングが遅れ、無用な被ばくをしました。スピーディ情報が公表されていれば、もっと早く避難できましたから、避難が遅れたことによる被ばくは上乗せされた被ばくです。20ミリシーベルト基準で学校が再開されなければ、子どもたちは少なくとも通学時の被ばくを避けることができたし、避難を続けることができた子ども(学校が再開されるので避難先から帰還した子ども)も多数いました。これも無用な被ばく(被ばくの上乗せ)です。安定ヨウ素剤が服用できていれば、放射性ヨウ素の甲状腺への取り込み量は少なくて済みましたから、ここでも子どもたちは無用な被ばく(被ばくの上乗せ)をしています。控訴審判決が、子どもたちが上乗せで何ミリシーベルトの被ばくをしたのか主張せよと求めているのなら、それは、不当です。数値が示せるはずがありません。数値は示せなくても、無用な被ばくをしたことによって、原告たちは精神的苦痛を感じています。その苦痛を感じることが合理的であるのであれば、損害の主張、立証としては十分なはずです。損害の主張、立証がないとする仙台高裁の判断は不当極まりないものです。

2 国や福島県の違法行為について
(1) スピーディ情報の隠蔽について、判決は、放出源情報(原発からいつ、どれだけの放射性物質が放出されたかという情報)が得られず、正確な予測ができなかったから、スピーディ情報を公表しなかったことは裁量の範囲内であると判断しました。確かに、放出源情報があれば、地形情報、気象情報と合わせて、どの地域に、どの時刻に、どの程度のプルーム(放射性雲)が襲うのか予測できます。本来、スピーディシステムはそれを予定していました。しかし、仮に、放出源情報がなくても、地形情報、気象情報はあったのですから、放出された放射性物質が、その量は特定できなくとも、どの方向に流れるかは予測できたし、その情報は結果として正確でした。であれば、スピーディ情報が公表されていれば、避難する人々は、どの方向に逃げるべきかについて、正しい判断ができたはずです。放出源情報がなくてもスピーディ情報は公表すべきでした。
(2) 子どもに対する安定ヨウ素剤の投与指標を「甲状腺等価線量10ミリシーベルト」とすべきところを「100ミリシーベルト」とした点について、判決は裁量の範囲内であるとしました。WHOは、チェルノブイリ原発事故の際、ポーランドでは、100万人の子どもに安定ヨウ素剤を投与して小児甲状腺がんの発症はゼロであり、副作用もゼロだったという経験を踏まえ、1999年には、小児に対する安定ヨウ素剤投与の基準を10ミリシーベルトにすべきと世界に勧告していました。日本がそれでも100ミリシーベルトとしたのは、副作用リスクを、ポーランドの大人のしかも中・軽度の副作用「1万人に6人」という数値を採用したからです。私たちは、小児に対する安定ヨウ素剤の投与指標を定めるについて大人の副作用リスクの数値を用いたことの不合理を主張しましたが、判決はそれを容認してしまいました。
(3) 年20ミリシーベルトを基準として学校を再開したことについて、私たちは、年1ミリシーベルトという基準を子供について20倍にしたことの不合理を主張しましたが、判決は、国がICRPの2007年勧告にしたがったことを合理的だと判断しました。年1ミリシーベルト基準は法律です。年20ミリシーベルト基準は、イギリスのNPO団体であるICRPの勧告にすぎません。なぜ、法律を無視してNPO団体の勧告に従ったことが正当化されるのか、まことに不合理です。
(4) 山下発言について、判決は、「科学的知見に著しく反する内容であるとはいえない」としました。「科学的知見に反する」としても、「著しく」はないという趣旨のようです。しかし、福島県から放射線管理アドバイザーとして委嘱された専門家が、「科学的知見に反する」説明をすれば、それは違法ではないのでしょうか。

3 福島地裁の第1審判決が、すべて「行政の裁量の範囲内」であるとして違法ではないとしたのに対し、控訴審判決は、一審判決よりも内容に踏み込んだうえで、行政の措置はやはり裁量の範囲内で、不合理とは言えないと結論づけました。その結論を導くために、その判断構造には、不合理な事実認定、強引な判断が目につきます。

4 以上、判決の内容の一端をご報告しました。上告するか否かを決定するにあたり、判断材料にしていただきたく、お願いいたします。
以上

水戸喜世子共同代表報告

何という司法の堕落ぶり!
共同代表 水戸喜世子

今日12月18日、『子ども脱被ばく裁判』の『親子裁判』国賠訴訟部分についての判決が出た。原発事故が発生した時、避難するかしないか、それを選択する権利は主権者一人一人が持つ。その場合の前提になるのが、国、県から正しい情報が与えられているかどうかだ。果たして正しい情報が与えられたかどうか?
・山下俊一の数々のウソ。10を超える科学的事実に反するウソ(ウソであることを本人も全て法廷で認めた。緊急時だから、やむを得なかったとして)
・スピーディを正しく公表しなかった
・安定ヨウ素剤を飲ませなかった
・20ミリシーベルトの環境下で、授業を再開したこと

原告側は国際的基準を上げ、詳細に項目を立てて立証してきた(最終準備書面で私たちは見ることができる)。更に闇の部分を明らかにするために、内堀福島県知事はじめ問題項目ごとの、行政の担当官を法廷に呼ぶように証人申請をしたが、石栗正子裁判長は全員却下した。

石栗裁判長は前回の判決(人権裁判譜分)では、判決理由も読み上げずに退場するという不誠実な職務態度であったことから、弁護団から『必ず自ら読み上げよ』とあらかじめ要求をした為にA45ページの『判決要旨』を今回は読み上げた。

判決『棄却』と読み上げた瞬間に『ナンセンス!』と声が上がった。次第に法廷は怒りの声が上がり始めた。こじつけとしか言いようのない理由づけの結論は全て国・県の言い分の上書きそのままであった。
なんという司法の堕落ぶり!命を守る立場に立つのか、政権の走狗となるか。彼女は誰の目にも明らかに後者の側を選んだ。怒号が飛んで当然である。旗だしの裁判所前でも『子どもの命を守らなくて、何を守っているのだ』、糾弾のシュプレヒコールは止まなかった。

この日の始まりは仙台元鍛治公園。葉を落とした欅の伸びやかで細い枝が冬の澄み切った青空に美しいシルエットを際立たせていた。判決もこの澄み切った青空のようであって欲しいものだと、みんなが願ったものだ。ここでミニ集会を開き、市中デモをして弁護士会館まで歩き、決起集会を行った。原告も7名が傍聴した。うち3名は病との闘いの中にある。

茶番劇の高裁は終わっても、当然の最高裁が終わろうと、おそらく私たちの『子どもを被ばくの心配のない環境で子育てをしたい』社会の実現には、まだまだ多くの人々の目覚めと、努力が必要だろうと思う
それほど『被ばくファッシズム』の壁は世界の核産業によって築き上げられている。
もっともっと頑張らねばならない。子ども裁判は大きな楔を打ち込んだし、すでに破綻はおおいかくせなくなってきている。腰を据えて頑張ろう。

判決要旨








報道

■2023/12/19 民の声新聞 【子ども脱被ばく裁判】〝親子裁判〟二審も敗訴 SPEEDI情報の信頼性を否定し、年20ミリシーベルト基準も山下発言も容認 原告「最高裁まで闘う」と上告方針~仙台高裁

■2023/12/18 NHK福島 原発事故“子ども被ばく”賠償訴訟 2審も原告側の訴え退ける

■2023/12/18 NHK宮城 子ども被ばく裁判 2審も棄却 仙台高裁

■2023/12/18 Our Planet-TV 「子ども脱被ばく裁判」2審も棄却〜仙台高裁

ありがとうございます。

当日の様子

↓画像をクリックするとスライドショーが見られます

QooQ