子ども脱被ばく裁判とは…
東京電力福島第一原子力発電所事故から10年が過ぎた今も、放射性物質は放出され、廃炉作業は困難を極めています。「低線量の放射線に長期間にわたり継続的に被曝されることによって、その生命・身体・健康に対する被害の発生が危惧される」(2013年4月24日ふくしま子ども疎開裁判仙台高裁判決文抜粋)と司法も認めているように、子どもたちの健やかな成長が脅かされています。
2014年8月29日、福島に住む親子や県外に避難した福島県民が福島地方裁判所にふたつの裁判から成る「子ども脱被ばく裁判」を提訴しました。
ひとつ目の「子ども人権裁判」は、原告の子どもが居住する自治体を被告とした「子どもたちに被ばくの心配のない環境で教育を受ける権利が保障されていることの確認」を求める裁判。
ふたつ目の「親子裁判」は「原発事故後、子どもたちに被ばくを避ける措置を怠り、無用な被ばくをさせた責任」を国と福島県に認めさせる裁判でした。
6年半に亘り、弁護団は国策の誤り、国や福島県の不作為、内部被ばくや低線量被ばくの危険性、セシウム含有不溶性放射性微粒子の存在などに関する数々の証拠を提出し、山下俊一氏や鈴木眞一氏らの証人尋問を実現させ、全精力を本裁判に注いできました。原告も涙を堪え怒りに震えながら、子どもを無用な被ばくから守ってほしいと陳述に立ち、数え切れない支援の手が国内外から寄せられました。しかし、2021年3月1日、遠藤東路裁判長が下したのは、原告の訴えを全て退ける判決でした。
この不当判決を受け、同年3月15日、原告118名は仙台高等裁判所に控訴。子どもたちのいのちを守り、被ばくしない権利を求める裁判が、杜の都・仙台で始まりました。